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去る3月6日ラグビー社会人トップリーグ(TL)のトヨタ自動車ヴェルブリッツから、2019年度の追加新入団選手の発表があった。そこには「キアラン・リード」の名前があった。

 

そして主な代表歴には「NZ( ニュージーランド)代表(主将)」とある。しかもこれは現在の姿である。そうトヨタ自動車は現役の、しかも世界最強と謳われているオールブラックス(NZ代表)のキャプテンを加入させたのだ。

 

今までも多くの、現役代表選手が日本のTLのチームに加入しているが、現役のオールブラックスのキャプテンというのは日本ラグビー界にとっても衝撃的なことである。

ジェイク・ホワイト監督はオフィシャルHP上で

 

「世界屈指のキャプテンシーを持つ偉大な選手の加入は、若手の多いヴェルブリッツにとっては大変心強い。チームを優勝に導いてくれることを期待している

 

また、日本全国の若い選手達にはプレーだけでなくグラウンド内外での達振る舞いなど多くの事を学んでもらいたい。彼の存在は日本ラグビー界の発展にも大きく寄与してくれるだろう。」と全幅の信頼と期待を込めたコメントをしている。

 

さてこのキアラン・リード選手というのはどういう人物であろうか。

1.オールブラックスの超基礎知識

NZにラグビーが伝来されたのは、1860年代後半だとされ、1905年から1906年に初の北半球遠征を行った際にオールブラックスと呼ばれるようになったとされる。

 

ユニフォームが黒色であることから、「黒衣の軍団」とも呼ばれるが、このニックネームの由来には、このNZ戦を取材した英国の新聞記者が、一見動きの鈍そうなFW(フォワード)の選手が、BK(バックス)の選手のような素晴らしいスピードで走るのを目の当たりに観て、

 

彼らを「ALL BACKS(オールバックス)」と呼ぶ原稿を書き上げたのだが、翌朝の新聞にはミスプリントで「ALL BLACKS(オールブラックス)」と掲載されてしまい、この呼称が一躍有名になったことが以前より代表チームに黒のジャージを用意していたNZ協会の意向と一致して、このニックネームが定着したと言われている。

 

以前より世界最強の呼び声が高かったが、ラグビーにはテストマッチ(国代表のチーム同士が対戦する試合)以外力の強さを計る術はなかった。

 

しかし世界一を決定する大会、ラグビー・ワールドカップ(RWC)が1987年に開催され、見事オールブラックスが第1回の栄冠に輝いた。

 

しかしその後、竜巻モールと呼ばれたモールプレーに固執するスタイルが批判をされたり、ランニングプレーを目指すあまり小型化してしまったりと、試行錯誤の上一時低迷したが2011年に24年ぶりに優勝を飾ると、翌2015年大会にもRWC史上初の二連覇を達成をして、今大会でRWC三連覇を狙う。

2.ラグビーにおけるキャプテン

 

ラグビーというスポーツにおいてキャプテンは「スキッパー」と呼ばれることが多い。

 

船の舵取りである船長を指す言葉だが、いざピッチに入ってしまえば、監督、ヘッドコーチ(HC)も指示できないラグビーという競技において、試合中の決定権を持ち他の選手もこれに従う。そしてこれにはその判断において責任を持つことにもなる。

 

2015年のRWCの日本vs南アフリカ戦の3点差をつけられた残りワンプレー、ゴール前でペナルティを得た日本は、キャプテンのリーチ・マイケルがベンチ周辺からの「(ペナルティゴール〈PG〉=ショットを)狙え!」という同点狙いの声を振り切るようにスクラムを選択した。

 

そして他のメンバーもこれに従い各々の役目を果たして、あの劇的な逆転トライが生まれた。しかしこれが失敗に終わればリーチは責められたはずだ。それだけの覚悟の上の判断だったのであろう

 

そして、レフリーは注意や警告を発する時にはキャプテンを通じて行い、逆にレフリーに質問がある時はキャプテンが代表して行う。つまり、基本的にレフリーはキャプテン以外とは試合中会話をしないので、レフリーとのコミュニケーションも重要になってくる。

 

大学のチームには卒業年度より、そのシーズンのキャプテンの名前を冠して○○組、△△組など呼んでいる位である。  

 

そしてRWC二連覇時のキャプテンは“絶対的”キャプテン、リッチー・マコウであった。

3.キアラン・リードとは?

そして、このフランカー(FL)のマコウと常に同じ第3列にいたのがNo8のリードである。いわばバイプレーヤー的存在で派手さはないが、安定感のあるプレーで周囲の信頼は厚く、この常勝チームのキャプテンを引き継ぐこととなった。

 

強いオールブラックスを体現している選手であり、「勝ち方」を知っている選手である。高校時代から学業もトップクラスで、類い稀なリーダーシップを持っている。

 

身長193cm・体重110kg・代表キャップ109・33歳

 

クリケット選手としても注目されていたが、高校時代にラグビー一本に絞っている。

 

 

所属チームではスーパーラグビー(SR)のクルセイダーズに所属し、ブラインドサイド(狭いサイド)FLをこなし、ここでもオープンサイド(広いサイド)FLのマコウとペアを組んでいる。

 

一般的にブラインドサイドFLは突破力に秀で、オープンサイドFLは機動力に秀でているというが、リードはボールごと相手を倒すような強烈なタックルや、相手を仰向けによう倒すようなヒットも見せるが、

 

何と言ってもデフェンスラインの綻びを縫うようなカバーデフェンスや、ラインからスピード豊かに抜け出し、華麗にパスを離すという機動力も見せる。そしてなんといっても密集付近のデフェンスから、ウイングの大外にまでフォローしトライを挙げる抜群のポジショニングだ。

 

これは休むことを嫌い骨身惜しまず走れるフィットネスと、ゲームの流れを読むことのできるイメージの豊さである。そして2016年度の「世界で最も影響のあるラガーマンTOP10」の№1にも選出されている。

 

こんなキアラン・リードは2019RWC終了後代表チームを引退して、トヨタ自動車に加入する。そしてそのトヨタ自動車は伝統的にFWが強く、日本一の経験も豊富なチームであるが近年やや低迷していた。

 

しかし一昨年帝京大学を卒業後、いきなりキャプテンに指名された日本代表の姫野和樹選手らの加入もあり、現在上昇傾向にある。

 

そして姫野選手はリードと同じ第3列のプレーヤーである。リードの加入がチーム全体の意識の持ち方に影響を与えるだろうが、特に日本期待の若武者姫野選手に与える力は多大なものであると思われる。

 

昨年は神戸製鋼がオールブラックスのスーパースター、ダン・カーターの加入により15年振りに日本一の栄冠に輝いた。今年はトヨタ自動車がアクセル全開でアウトバーンを突っ走るのだろうか。

 

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