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「ラグビーアナリスト」という聞き慣れない言葉をご存知ですか?ヘッドアナリストとも言われます。

 

意味は読んで字の如く、「ラグビーに関するアナリスト」です。

 

アナリストとは、「分析者」と訳されますね。「証券アナリスト」という言葉は聞かれた事があるかと思います。

 

株価の動向を調べ、次にその株価の値動きがどうなるのかをあらゆるデータを使って「分析」する人の事です。

 

ラグビーアナリストも同様、「分析」を生業としています。ラグビーを分析する、という行為自体は目新しいものではありません。

スカウティング

1980年代には既に行われていました。当時は「スカウティング」という言葉が一般的でした。

 

当時から強豪チームには専属の「スカウティング部隊」が存在し、対戦相手チームの練習や試合をビデオに収め、そのプレーを解析・分析していました。

 

当時のスカウティングは現在と比べると当然の事ながら荒っぽく、物凄く大雑把に言ってしまえば「13番の選手はタックルが良い」「オープン攻撃の時は縦を突くより横に流れる傾向がある」と言った感じです。

 

もちろん、これはあくまで大雑把に言っていますので、もっと詳細に「見ていた」事は間違いありません。誤解の無きよう。

 

ただ、この当時のこれらの作業は「ラグビーアナリスト」では無く、あくまで「スカウティング」の域を出ておりません。先に述べたとおり、主な作業として「見ていた」事を主軸に置いてました。

 

相手チームのプレーを「見て」そこから感じる事を「報告」していたんですね。

 

アナリストとは、更に一歩先に進んだ仕事です。

 

プロ野球や高校野球においても同様な仕事は存在します。そして、野球界に置いて彼らは「データアナリスト」と呼称されます。

 

そう、大事なのは「データ」なのです。

 

野球に置いては、スコアブック等に詳細なデータが「数字」として記載される事は皆さんご存知かと思います。例えば打者が何球目を打ったか。打球がどこに飛んだか。どういう結果になったか。これらが詳細に記載されます。

 

スコアブックには記載されませんが、例えばピッチャーがストレートを何球投げたか。変化球を何球投げたか。変化球におけるカーブの割合はどれくらいか。

 

こういった事を事細かに数字として捉え、その膨大な数字が「データ」として蓄積され、そしてそのデータを分析する。故に「データアナリスト」と呼称される訳です。

ラグビーアナリストとの仕事

ラグビーの世界ではこの「数字」に該当されるものを「スタッツ」と呼びます。テレビ中継を見ていると、ハーフタイムやノーサイド後に「トライ数」「ペナルティゴール数」「ポゼッション(ボール支配率)」などの数字が出ているのはご存知ですか。

 

ラグビーアナリストとは、この数値化された「スタッツ」を分析し、「どういう傾向にあるか」「どこに弱点があるか」等を導き出す仕事です。

 

テレビ中継におけるスタッツは両軍のトータルの数しか出ませんが、ラグビーアナリストが分析対象に使うスタッツはもっと細かく、プレイヤー一人一人に対して、更に詳細な項目が数字で表されます。

 

例えば「このプレイヤーはハンドリングミスを前半のうちに30回した」とか、「このプレイヤーは試合を通してタックルミスが一回も無かった」などです。

 

ラグビーアナリストはこれらの分析結果から導き出した答えを元に、自チーム・相手チームのプレイヤー一人一人の「プレー傾向」を導き出すのです。

 

ラグビーアナリストの仕事は一般的にここまでです。導き出した「プレー傾向」を元に、短所を克服し、長所を伸ばす練習メニューや試合での対応方法を考え出すのはコーチの仕事になります。

 

日本代表で言うと、トニー・ブラウン攻撃コーチや長谷川慎スクラムコーチが有名です。

 

トニー・ブラウン攻撃コーチはその鬼謀で知られています。

アナリストからの分析データを元に、「相手の密集サイドが弱い」と見るや、WTB福岡堅樹選手をSHの位置に立たせ、スクラムサイドから一気に突破を図る等の奇策を考えだしたりします。

 

長谷川慎コーチは現役時代「スクラム番長」の異名を取り、スパイク裏の突起を何本地面に刺すか、というところまで拘った指導で知られます。

 

体格の小さな日本選手が如何に世界と互角にスクラムを組むか。これらの指導に全身全霊を傾け、2019年W杯では世界に押し負けない日本のスクラムを完成させました。

 

ラグビーアナリストとコーチの関係は、企業における「マーケティング」と「商品開発」の関係に似ていると言えるかも知れません。

 

市場データを調査し、どういうマーケットでどういう品物が流行っているか、どれくらいの金額帯のものが売れているか、主要購買層の年代はどれくらいか、

 

等をマーケティング部隊が分析し、それを元に「売れ筋の商品はこれだ」と選定、マーケットにあった商品を試行錯誤の上で商品開発部隊が作り出す。

 

商品開発部隊が作り出した商品を販売するか否かの「GO」は社長が出すと考えれば、社長とはヘッドコーチになるのかも知れません。

 

企業においてはマーケティングがしっかりしていなければ、いくら商品開発部隊が優れていても売れ筋の商品を作り出す事は出来ません。

 

ラグビーアナリストとコーチも同様で、アナリストが間違った分析をしてしまえば、いくらコーチが優秀でもチームは強くなりません。

 

間違った分析を元に、間違った戦略を立ててしまうからです。ラグビーアナリストとは、表舞台に出る事なく地味な存在ですが、同時にチーム戦略の根幹を為す非常に重要な仕事と言えます。

どうすればラグビーアナリストになれるのか?

ラグビーアナリストになる為に公的資格は必要ありません。

 

極端なことを言ってしまえば、「私はラグビーアナリストだ」と宣言すれば、その時点でラグビーアナリストになれてしまう訳です。

 

もちろん、宣言したからと言ってすぐに仕事が来るかと言えばそうではありません。仕事が来るにはきちんとしたスキルを身につける事。当たり前の話ですね。

 

では、ラグビーアナリストに必要なスキルとは何なのでしょうか?

 

ラグビーのプレー経験が有るに越した事は無いのですが、決して必須ではありません。プレー経験者に比べれば道は遠回りになってしまう可能性は当然有りますが、未経験者でもなれます。

 

大事なのは「ラグビーが大好きだ」という心です。
寝ても覚めてもラグビーの事ばかり考えてしまうという、「ラグビー狂」である事。これが一番大事です。

 

データ収集は主に映像で行いますので、映像編集の技術も必須です。取得した映像を編集して分析し、解析結果を見やすい形でコーチ陣に伝えます。

 

「解析結果をきちんと伝える」という意味では、「物事を判りやすく伝える事が出来る」というコミュニケーション能力も必要です。

 

トップリーグのレベルになると、外国人がコーチを勤める事も多々あります。英語も習得しておいた方がより良いでしょう。

 

分析には、専用の分析ソフトが使われる事が多いです。有名なものだとsportscodeやnacsport等があります。これらの分析ソフトの扱い方も習熟する必要があります。

 

アナリストとしての技術をある程度習得したら、次は人脈作りです。例えば中学・高校の教師であるとか、所属チームをお持ちの方はこのステップは不要かも知れません。

 

全くイチから始めて、「ラグビーアナリストとして生計を立てたい」と思っている方であれば、人脈は不可欠です。

 

高校・大学の部活動の先輩を頼るも良し、企業に入ってその企業チームの専属を目指すも良し、自分の母校にラグビー部があれば母校を尋ねるも良しです。

 

近年はSNSも発達しており、生活の中で欠かせないツールになってます。SNSでラグビーチームの関係者にリプライを出し、人脈を作るのも有りです。

 

が、そもそもアナリストを求めるようなレベルのラグビーチームの数自体が決して多くはありません。狭き門であることだけは覚悟しておいて下さい。

 

日本で有名なラグビーアナリストというと、まず船戸渉氏の名前が挙げられます。トップリーグ・コカコーラのアナリストをしておられます。

 

船戸氏が「尊敬するアナリスト」として名前を挙げられたのが中島正太氏です。2015W杯、「史上最大のジャイアント・キリング」と呼ばれた南アフリカ戦。

 

あのW杯の時の日本代表ラグビーアナリストが中島氏でした。


画像ソース

中島氏が分析した結果を元に、エディ・ジョーンズHCを始めとするコーチ陣が戦略を立て、フィールドの選手達がその戦略を余すところなく実践する。南アフリカ戦の奇跡はこうして起きたのです。

 

ラグビーアナリストとは、究極の「縁の下の力持ち」と言えるでしょう。

 

ラグビーが大好きで、映像編集が好きで、データから何かを読み解く事が好きで、そして何より人の役に立つ事、チームの支えになる事が大好きな人。

 

そういった人であれば、狭き門かも知れませんが、ラグビーアナリストとしての道は広がっているのでは無いでしょうか。

 

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