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ラグビーはフィールド内の15人とリザーブの8人の計23人で試合を戦うわけだが、その他グラウンドレベルには「MEDICAL」と書かれたビブスを着たセーフティーアシスタント(旧・メディカルサポーター)と、「WATER」と書かれたビブスを着た給水係=ウォーターボーイがいる。

 

セーフティーアシスタント制度とは、1988年度より開始されたメディカルサポーター制度を、現場の安全管理を取り巻く環境の変化を踏まえ、2012年度より名称変更と1部内容変更したものである。

 

それまでは負傷者が出た場合、レフリーの指示により試合中の競技区域内に入れたものが、レフリーの許可なしに区域内に入り治療や判断が出来るようになったことが一番の変更点である。

 

このことにより負傷による試合の中断を大幅に減少するとともに、試合中の怪我に対する迅速な対応という重要な役割を持っている。

 

そしウォーターボーイは、プレーの合間に選手に給水する係であるが、選手に運ぶのは水だけではない。

 

いざ試合が始まれば観客席に行ってしまい、直接ピッチ上の選手に指示することが難しい監督・コーチは、インカムを使って、グラウンドレベルにいるウォーターボーイと連絡を取り合い選手に指示をすることが可能である。

 

この指示を受けるか受けないかは、試合をしているキャプテンの判断だが、このウォーターボーイには正確に指示を伝え、キャプテンがその指示を納得し受け入れるようなコミュニケーション能力が要求される。

 

また指示があってからプレーが途切れないこともある。そうすると時間の経過と、試合の流れの変化を加味する必要も出てくる。そしてラインアウトやスクラムからのサインの解読などとその役目は多い。

 

そのためウォーターボーイには、大変信頼される選手が務めることが多く、怪我を治療中のレギュラー選手や、前キャプテンなどが務めることが多くみられる。神戸製鋼ではあのダン・カーター選手が務めたこともある。

 

このメディカルサポーター制度が始まる前には、選手が倒れると(レフリーが気付かずに置き去りにされたこともあった。)レフリーがベンチを呼び、そうするとリザーブの選手やマネージャー等がドクターバック(救急箱)と水の入ったやかんを持って倒れている場所に走って行った。

 

このやかんは社会人の強豪チームから高校生のチーム、草ラグビーのクラブチームまで絶対持っていたものであり、水は入っているが決して給水用のものではなかった。

 

(当時は試合中に水を飲むという考えはなく、1971年のイングランド代表との花園での第一戦のビデオを見ると、負傷の選手のために持ってきたやかんの水を、あまりの暑さに飲ませろと懇願するイングランドの選手をレフリーが遮ったシーンがある。解説者も「試合中に水を飲むだなんて信じられないですね。」と言っていた。)

 

そして倒れていた選手にその水をかけると、きりっと立ち上がってまた試合に戻ったので、これが「魔法のやかん」と呼ばれるようになった。

 

これはおそらくやかんが到着するまでの間にすでに元気になっていたのであろう。中身はただの水だけにもちろん大怪我には効かなかったが、「あの液体を買いたい。」と言った社長さんがいたとかという話があった。

 

そしてそのやかんの水を敵、味方関係なく注ぎ口から飲み合い糊口を潤すこともあった。そのためわざと倒れるという行為もあり、試合が中断することも多く(それよりも試合の流れを替えたいという意味があったようだが。)大きな問題になったこともあり、このことがメディカルサポーター制度成立の一因でもある。

 

そして現在では試合中に水を飲むことが当然に常識となり、ペットボトルが使われ個々に給水をしているが、あのチーム名が書き込まれた「魔法のやかん」は今はどうなったのであろうか。

 

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