2022年初頭から始まった日本ラグビー・トップリーグの後進『リーグ・ワン』。新たな門出として出発した今季。新リーグだけあって課題もありますが、この大会で成長する事が日本ラグビーの明日を占うと言っても過言ではありません。今回はそんなリーグ・ワンの概要やこれからについて説明します。
目次
競争
新たなリーグ形式では実力が近い同士がディビジョン(グループ)内のリーグ戦を行う事で競争力を生みます。前身トップリーグの下部リーグにあたる地域リーグから複数のチームを合わせ3つのリーグに分散させた形となります。
トップリーグでは各チームが1試合ずつ互いに行う形式となり順位に基づき決勝トーナメントを開催でしたが、今年度のリーグ・ワンでは全チーム数が24あり、それを3つのグループに分けています。
トップグループのディビジョン1(部)では全12チームを2グループにし各6チームでリーグ戦が第2ラウンドまで行われ順位決定戦まで行われます。またディビジョン同士の下位と上位で入替戦も行われるので2部、3部にとっても意味のあるリーグとなります。
今季もコロナウィルス蔓延の影響で試合数が現在減少している状況ですが、開催できるチームが白熱した素晴らしい試合を見せてくれています。ディビジョンこそ一番下の3部ですが中国電力や清水建設が素晴らしい展開ラグビーで前身のトップリーグに参加していたチームに実力で競えるという事を証明しています。
これまで実力を証明する為の機会が年に一度の入替戦しかなかったチームにとってはこの方式になった事で競争への意識も高まるのではないでしょうか。
地域密着
これまでは日本協会指定の会場で試合をしていましたが、全チームがホームグラウンドを持ち、ホーム&ビジター制を導入。選手達にとっては慣れた会場での試合ができる点や、試合も6チームでリーグ戦を行い同じ相手と最低2回行う為に移動が少なくなるのでチームへの負担が減るというメリットがあります。
地域に密着する事で当然根強いファンを獲得し競技を普及する事も地域限定で集中できます。筆者の感覚で言えばサッカーで浦和といえばレッズ、柏といえばレイソルというように、知名度によりこれからスポーツを始めようとする人達にとって選択肢にも入ります。ラグビーでは親や友人の勧めでラグビーを始める人達が多いです。
日常からラグビーを知ってもらうにはチームがその地域の自治体や企業など多くの人達と協力してストラクチャーを築かなければいけません。これによりリーグ全体を通して試合会場の観客動員数の均等化も図る事ができます。
筆者が思う課題:現在、一部チーム名の名前に付いている地域名について複数チームが重複しているという事で困惑している声が屡々聞こえています。
東京サントリーサンゴリアス、東芝ブレイブルーパス東京、リコーブラックラム東京とラグビー経験者であってもややこしい印象です。
この名前の長さも地域が被ってしまう事も解消する事でリーグ関係者だけでなくファンへの認知も上がるのではないでしょうか。今後メディアにも出る機会があれば、大切なのではないでしょうか。
チーム運営の独立
これまで前身のトップリーグでは日本ラグビーフットボール協会を軸に運営されていたリーグが一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンに移管となり、これからは各チームが自ら各々の試合でのチケット、グッズ販売し収益を得ます。
野球やサッカーでは長年行われているものですが、アマチュア精神を重んじるラグビー業界が日本人選手にもプロ選手契約を導入してからここまで来たのは18年と経ち、ようやく踏み込んだ新たな一歩となります。
課題:各チームはようやく運営する権利を得て収益にも責任を持つ事となりますが、最も解決したい点はやはり集客ではないでしょうか。コロナウィルス蔓延が影響し来場できないファン達にどうやって試合を見てもらうか。
勿論、会場に来てもらう事も試合そのものを盛り上げ価値を高めるものとなり、その後の興行にも影響します。
現在はコロナウィルス感染防止の観点から、テレビ中継だけでなくパソコンやスマートフォンから試合観戦するファンもいるので、多くのコンテンツも駆使してラグビーが日常になっていく事が理想なのかもしれません。また、ワールドカップで行われていた様なパブリックビューイングのように会場以外の場所で多くの人達が試合を見れる場所を提供するのも良い宣伝になるのではないでしょうか。
日本代表強化
リーグ・ワンを発足した最大の目的は日本代表の強化です。
ラグビーの認知、日本ラグビーを評価してもらえる最大の機会は日本代表の結果が全てだと思います。そして結論から言うとやはり日本人選手の個々の成長が鍵になると思います。
昨今は世界の一流選手達や身体能力と体格で規格外のプレーをする選手達が海外から日本ラグビーに参加しており中には日本代表を目指す選手も増えています。
※IRB(国際ラグビーボード)は国代表経験のある選手が他国の代表になる場合の条件を述べております。例えば今、日本代表の海外出身選手も条件を満たせば出生国の代表になる事もできるという事です。リーグ・ワンの選手には多くのアイランダー系の選手(トンガ・フィジー・サモア)が多くのチームに所属しているので今後の選手の流れにも影響があるかもしれません。
海外の強豪国ではチームも選手も全員プロとして活動していますが、環境によっては他国のチームに加入する選手も今や当たり前の時代です。
例えばポリネシア諸島に属するトンガ・フィジー・サモアの選手達はプロとしても選手としても母国では向上が難しい環境である為に海を渡り南半球のチームや欧州のチーム、そして日本やアメリカのようなラグビー発展途上国でプロ選手として活動している選手も多いです。彼等は後に母国の代表選手としてその経験をチームに還元しています。
日本国内のレベルを上げる為には、
・優秀な選手やスタッフを獲得
・個々の成長
・選手の海外リーグ挑戦
といったものが挙げられるのではないでしょうか。
3つ目に記した海外リーグで言えば、これまでも実績があります。
・スーパーラグビーのハイランダーズに所属しリーグ優勝を日本人で経験したSH田中史朗。
・同じくスーパーラグビーのレベルズで存在感を示したパナソニックのHO堀江翔太。
・ハイランダーズに移籍しルーキー・オブ・ザ・イヤーも受賞したトヨタのNo.8姫野和樹。
・桐蔭学園卒業後に南アフリカに単身で渡り堀江とレベルズ・日本代表と活躍し、2020年からフランス最高峰トップ14のクレルモン・オーヴェルニュへ移籍したFB松島幸太郎。
日本代表でも活躍してきた彼等のように選手自身が海外に挑戦する事が更なる代表強化には必須になると思います。
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