
いよいよ第100回を迎える全国高校ラグビー選手権大会。新型コロナに苦しんだ1年だったが、その苦しみを乗り越えて高校ラガーメン達が花園に帰ってくる。
100回の記念大会を制するのはどこの高校なのか、追ってみたい。
「冬の花園」と同じように「春の熊谷」として定着しつつあった選抜大会が今年は新型コロナの影響で残念ながら中止となってしまった。
今年に限っては「全国優勝」という言葉を掲げられるのは、文字通り「冬の花園」を制した一校だけに限られるのである。例年以上にどこの高校も必死に優勝を取りに来るであろう。
2010年以降の9大会を見ると、決勝進出校がある程度固まっていることは一目瞭然である。昨年度優勝の桐蔭学園が5回と最も多く、次いで東福岡と東海大仰星が4回で並んでいる。
その後に昨年度準優勝の御所実が3回、大阪桐蔭が2回と続いている。
大阪桐蔭は地区決勝で東海大仰星に破れ出場権を逃しているが、これに同じく大阪から勝ち名乗りを上げた大阪朝高、常翔学園、7年連続で京都を制した京都成章などの関西勢を加えた8校から優勝校が出ると考えるのが自然だろう。
だが、この8校のなかから優勝候補を「1校選べ」と言われるとこれは難しい。
優勝候補1.桐蔭学園
引用:毎日新聞
まず昨年度優勝の桐蔭学園。県予選決勝の相手は昨年と同じく東海大相模。19-10辛勝!6年連続19度目の優勝を飾った。
2連覇がかかった今大会は、選手たちのモチベーションも高い。注目選手でもあり、チームの大黒柱№8の佐藤健次がチームを牽引する。
県予選決勝は、圧倒的な強さを見る事は出来なかったが、昨年同様、優勝候補の筆頭に上げられるだろう。
対抗の一番手は東海大仰星ではないかと見る。
大阪第一地区の決勝でライバル大阪桐蔭に19-8で競り勝ち、花園出場を決めている。
東海大仰星は今年2月に開催された近畿高校ラグビー大会でも優勝を収めており、大阪勢3校の中でも地力は一枚上と思われる。
同大会でも準決勝で大阪桐蔭に38-0で完勝、決勝は京都成章に26-22とやや苦しんだものの、まずは順当と言っていい勝ちを収めている。
優勝候補2.東福岡高校
対抗二番手には東福岡をあげたい。東福岡はここ数年、花園での決勝進出を逃している。
昨年度の花園では優勝校桐蔭学園に7-34と準決勝で完敗、更にその前年度もこれまた準決勝で桐蔭学園に38-46と点の取り合いの末に敗れている。
今の3年生にしてみれば、1年生2年生の時と同じ相手に二度も敗れており、「三度も同じ相手に負けてたまるか」と闘志を燃やしていることは間違いない。
「春の熊谷」が開催されなかった今年はどうしても2月に開催された各地域の新人大会にデータを求めざるを得ないのだが、九州地区は東福岡の一強状態と言ってよく、あまり参考となるべきデータには成り得ないのが実情である。
実際に九州新人大会においても、専大玉名、長崎北陽台、鹿児島実業、そして決勝の佐賀工業と危なげなく下して優勝している。
2016年以来決勝に進出出来ていないとは言え、かつて三連覇を成し遂げた伝統の力は健在。加えて今年は両ロックの動きがとにかく良い。
両ロックに引き摺られるように、前へ前と進む強力フォワードの力で、王者桐蔭学園に雪辱を果たし、再びの王者に返り咲くことが出来るのか、大いに注目したい。
東の王者・桐蔭学園に、関西九州それぞれの王者である東海大仰星と東福岡が挑む。
優勝候補3.注目の関西勢
そこに加わる三番手グループはこれも関西勢の京都成章、常翔学園、御所実。
桐蔭学園以外の東日本勢は優勝まではやや厳しいといった様相ではないだろうか。
京都成章はこれまでの最高成績はベスト4。昨年はベスト8で涙を飲んだ。昨年度「史上最大」と自負していたフォワードのパワー、伝統の「ピラニアタックル」と呼ばれるディフェンスの強さともに健在。
今年初めの近畿大会では昨年度花園で敗れた相手常翔学園に準決勝で雪辱を果たし、決勝では東海大仰星に敗れたものの、前述したように22-26と肉薄した。
「4度目の正直」で準決勝の壁を突破し、一気に悲願の初優勝まで駆け上れるか。
常翔学園は2012年度以来優勝から遠ざかっている。かつての伝統校・大阪工大高から名前が変わって久しいが、名伯楽・荒川博司が育て上げた「大工大魂」は今年も健在。
荒川博司が天に召されてから来年で20年。節目の年を優勝で飾れるか。
御所実は昨年度、悲願の初優勝まであと一歩のところに迫りながら涙を飲んだ。昨年、東海大仰星に一度進学しながらも不登校となり、御所実に入り直した「19歳のラガーマン」島田彪雅(ひゅうが)を中心に決勝まで上り詰めたが、今年は全員の力で再び栄冠に挑む。
更に2校ほど、台風の目となる可能性のある注目校を挙げたい。
ダークフォース:長崎北陽台
引用:毎日新聞
今大会のダークフォースとなるであろう長崎北陽台高校 元々長崎県は激戦区の1つとして知られている。ご存じではない方も多いが代表として花園の切符を手にすることは非常に難しい地区なのだ。
長崎3強と言えば、2000年以降の長崎の花園出場校は長崎北陽台の最多の10回に続き、長崎北と長崎南山がそれぞれ4回出場している。
長崎北陽台は1994年に準優勝を経験しているが、100回大会は優勝の2文字を手にする可能性もある。
一人一人の能力が高いバックス陣。2対1でも冷静にパスを放れるフォワード陣。中でもウイングに山田駿也のトライにも注目だがチームのディフェンス能力にも注目したい!
常に前に出るディフェンスのプレッシャーと精度の高いタックルにいつも通りの攻撃が出来ない相手チームはすこぶる嫌がるだろう。
注目の高校:筑紫高校
1つは筑紫。今大会は100回の記念大会という事で、福岡からは2校の選出となる。福岡第二地区を接戦で勝ち抜き、5大会振りの出場となる。
前回は95回大会の記念枠での出場で、これが実に24年振りの出場。福岡県予選はここ20年来東福岡の独壇場となっているが、その東福岡の牙城に一番迫っていたのが筑紫である。
熱血監督・西村寛久の元、徹底したスパルタ指導で鍛えあげ、誌合前には「筑紫やぞ!」という西村の檄を受けてグラウンドに飛び出し、王者・東福岡に食い下がった筑紫フィフティーン。
5年振りの花園での目標も「花園で東福岡とやる」と、あくまで打倒・東福岡の合言葉は捨てない。全国の名だたる強豪を倒して、目指す相手東福岡まで辿り着けるのか。
注目の高校:目黒学院
もう1つは目黒学院。国学院久我山、大東大一、本郷、保善、早大学院、明大中野と全国区だった強豪がひしめいていたかつての「ラグビー王国」も今や昔。
東京勢の優勝は1997年の国学院久我山以来、実に23年もの長きに渡って絶えている。関東新人大会決勝で桐蔭学園に0-48で敗れた国学院栃木に準決勝で7-48と破れており、実力は一段落ちると思われていた。
が、都大会の決勝では同じ東京の伝統校・本郷を相手に47-5と完勝しており、調子は上向き。ひと夏を越えて上積みを図れたものと思いたい。
かつて全国を席巻した赤いジャージーが再び花園で暴れまくり、東京の復権を図れることが出来るか、注目したい。
第100回の記念大会には例年より12校多い63校が出場して、2020年12月27日から2021年1月9日まで、高校ラガーマンの聖地花園で開催される。
新型コロナと言う未曾有の事態に晒されながらも全国大会出場にこぎつけた高校ラガーマン達に賛辞を送るとともに、全国大会での健闘を心の底から祈りたい。