司令塔という言葉が最も適したポジション。それがスタンドオフだ。ラグビーをする人にとって最も重要なポジションの一つと挙げるならスタンドオフを選ぶ人が多いだろう。
海外ではこのポジションで最も認められた選手に『キング』と名付けるほどゲームを支配できる役割なのだ。
2021年のルール変更により、スタンドオフのポジションは今まで以上に重要な役割を担うことになる。
本ページではそのスタンドオフの重要な役割とスキルについてお伝えする。
スタンドオフの役割
ラグビーはリザーブを除けば15人対15人の計30人で戦うスポーツ。
これほど多くの選手達を束ねるには有能なリーダーが必要だ。フォワード・バックスそれぞれに複数の影響力ある選手を配置する事で戦略と戦術が成り立つ。
その中でもスタンドオフへの要望は高い。まずスタンドオフはチームのリスクマネジメントを任される。
本来はどのポジションの選手でも可能な事だが、80分通してそのような戦略を継続できるのはスタンドオフだろう。
通常、スタンドオフはスクラムハーフ同様にフォワードとバックスの連携プレーを指示するが、エリアマネジメントにも責任があるのだ。
敵陣までボールを運ぶにはボールを持って走るかボールをキックして前に出る方法がある。スタンドオフ以外の選手でもできる事だが、スタンドオフは有効なキックを蹴れる事に意味がある。
誰でも場の判断でキックを蹴る事が可能なスポーツなのだが、キック戦術には同時にカバーディフェンスが求められる。
つまりキックで前に飛んだボールを追う人が必要という事だ。
それは主にキッカー以外が行う事が多いが、追う人達はただ追うのではなく相手のカウンター対策の為に統率の取れたデイフェンスラインが必要になる。
もしもスタンドオフが味方と意識が合わずにキックをすればたちまち相手カウンターの餌食になる。
その為、周りと意識を合わせる事に加え声でも伝え指示伝達をする。プレーが止まらない中でそれを行うにはスタンドオフ特有の経験値が必要だ。
国内のキッカーでいえば日本代表のスタンドオフ田村優(キャノン)が参考になるだろう。
トップリーグで最も上手い選手との評判ある選手は自身のキックにも常に自信と洞察力を兼ねている。常人なら戦術に取り入れないスペースも田村選手にとっては十分なスペースとなり迷わずキックを選択できる。
事実、彼のキックを起点にトライを取った数は多い。
素晴らしい攻撃センスに加えて防御力もあるスタンドオフとして攻守にわたりエリアマネジメントを常に高い水準で遂行する。
スタンドオフのスキル
まずスタンドオフにはキックとパスの精度を高めなければならない。
ゲームメイカーとして成長する事も必要だが、チームによって戦略や戦術が異なる以上はスタンドオフとしての状況判断力を備えた基本スキルは高めるべきだ。
また、ラグビーでは派手なプレーが目立つスタンドオフもいるが反対に基本を軸にスーパープレーを1試合に2、3回するだけでチームを勝利に導く選手もいる。
どちらにもその為にはボールを扱う技術を必ず身に付けなければいけない。まずキックでは狙った方向、距離に合わせてボールを蹴る事だ。
セットプレーからのサインプレーならロングキックやハイパントといった陣地を稼ぐキックは当然飛距離が求められるが、近代ラグビーではキックパスも当たり前となり、そのキックも多種多様だ。つまり効率の良い工夫のあるキックも必要となる。
これはパスでも同じ事だ。
スタンドオフのパス能力によってアタックラインの広さや味方のポジショニングが決まる。パスの飛距離やスピードさえあれば広いライン攻撃はいくらでも可能となる。
パスが早ければディフェンスを射抜き相手のディフェンスラインを崩す。更にそのパスが伸び広いライン攻撃を可能とすればディフェンス同士の広いスペースにも容易に運べるだろう。
また、スタンドオフは選択肢が最も与えられやすく戦況を操る事ができる司令塔だ。その裁量の大きさからチームを良くも悪くも変えられる。
例えば、自陣トライラインの5m前で敵がボールを持っていたらディフェンスはより高い緊張感とプレッシャーと戦いながらプレーする。反対にそのような陣地でボールを持っていてもプレッシャーは高い。
なぜなら、自陣トライラインの近くでボールを敵に奪われる事は敵にとってはトライをすぐ取れるチャンスだからだ。
どちらの状況にせよスタンドオフが良いキックとパスをまず身に付ける事が重要なのだ。
そのうえで、状況判断力を身に付け正しい判断のもとでプレーをしなければいけない。
ラグビー界を代表するレジェンド アンドリュー・マーテンズを紹介する。キック・判断能力ともに世界最高峰を称された一級品のスキルを持つ選手だ。