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2018年1月に帝京大学が9連覇を達成した。その記録に日本のラグビーファンだけでなく多くの人が帝京大学の強さに疑問を持つ事は無いだろう。

 

前人未到の10連覇が掛かっている2018-19シーズン、帝京大学の偉業を阻止しようと各大学では既に新チームがスタートしている

 
https://www.waseda.jp/inst/weekly/feature/2017/11/20/37030/

 

今でこそ帝京大学がここまでの実力と実績を兼ね備えたチームとなっているが、過去には明治大学や慶応大学、リーグ戦では東海大学に大唐文化大学など強豪チームがいくつも存在し、勝利には届いていないものの帝京大学をあと一歩まで追い詰める闘いを幾度となく繰り広げてきた。

 

そんな現状で優勝から遠ざかる今も復活を期待されているチームの一角と言って良いのが、早稲田大学ラグビー部だ。10数年前に比べ圧倒的な存在感や強さに陰りが見えている所だが、かつては大学ラグビー界を引率するような存在だった。

 

この早稲田に、慶應、明治という伝統校が加わり勝利を争う試合こそ、社会人トップリーグを含む日本の全ての試合の中で最も関心のある試合と呼ばれている。

 

帝京大学の連覇が始まる前、早稲田大学が大学選手権を制覇する年を幾度も見てきた筆者だが、当時の早稲田大学の選手達の質で現在の帝京大学にどう立ち向かえたか、想像をする度に近年の日本ラグビーに変化を改めて感じているところだ。

 

■早稲田大学を率いた前監督・山下大悟

2002年度、早稲田大学は13年ぶりに大学選手権を制覇した。歓喜の瞬間、輪の中心となりチームの主将を務めたのが山下大吾だ。下級生時からウイングやセンターとして鋭い攻撃を見せ監督だった清宮克幸(現ヤマハ発動機監督)に最終学年で主将を任された。

 

キャプテンシーがありラグビーへの拘りも強い山下監督が早稲田のラグビー部監督に就任した2年前、低迷した同校復活を往年のファン達は期待した。

 

スローガンとして掲げた「Be the Chain」

その名の通り、鎖になれという意味だ。

 

それまで崩壊していたチームディフェンスを再建し鉄壁のディフェンスと意志を作ると掲げた同チームは基礎的なベース強化から始めた。

 

帝京大学を筆頭にフィジカルを重点的に鍛え早稲田に比べ有利な他校に対し、早稲田は速さを活かした高速ラグビーで対抗したが結果が実る事は無かった。

 

そして同監督就任後、弱点となりえるフィジカル強化と向き合い、その上で早稲田伝統の高速ラグビーを目指した。

 

山下監督が就任した年、レギュラーとして活躍するSH斎藤直人、SO岸岡智樹、CTB中野将伍など有力な選手が入部した。どんな優れた戦略も選手達が実行するもの。選手達のポテンシャルの高さは大学ラグビー界屈指だろう。

 

彼等3人だけでなく、NO8下川、FL丸尾、CTB桑山、WTB古賀などタレントは揃っている。明らかに山下前監督が就任前に比べてスカウトの結果は段違いに上がったと言える。

 

山下前監督が取り組んだものは様々ある。スポーツブランドのアシックスなど新たなスポンサー契約を結びラグビー環境改善もできた。選手達のフィジカル強化には食事面の管理も必要。これに栄養士も交えて選手達の食生活と筋力面は向上と改善を成した。

 

そして早稲田として拘ったセットプレーにも改善はあった。

 

スクラム強化にはトップリーグのヤマハ発動機で活躍したPR伊藤雄大コーチが就任。トップリーグで活躍してきた早稲田のOB達が知恵を絞り協力して早稲田復活を目指したのだ。

 

しかし、この2年間で大学選手権決勝に進んだのは帝京、東海、明治だ。早稲田に至っては2年連続ベスト8で終わっている。

 

■山下前監督の取り組みは無意味だったのか。

結論から言って意味はあった。

 

早稲田が何をすれば強くなるか、山下監督体制でその兆しは見えた筈だ。フィジカルを強みにするチームとフィジカルの差を縮める事。これが必須条件であり、これが無ければ対等に戦う事はできない。

 

そして、今までの早稲田で監督が交代した経緯を思い返せば、山下監督の退任は決して良い事ではない。監督の3季目を期待していたファンもいたと思うが、結果が原因の一つだった事は確かだろう。

 

監督就任からこの2年で今の大学ラグビー界で結果を出すのは簡単な事ではない。

 

上述の通り、ここ数年でまともにスカウトが成功したのは山下前監督が就任した年からだったのが、他大学の帝京大学、東海大、大東大、天理大など早稲田が結果を出せない間に選手層を厚くし安定した結果を既に出している。

 

そこに食い込むには継続したスカウトや土台作りしかない。

 

ただ大学側がスポーツ選手の推薦枠を広げてくれた事は大きい。清宮監督時代の早稲田大学では全国的に有望な選手が多く入部できた。

 

しかし、同氏の退任後は結果が中々出ない年が増え近年ではスポーツ選手の推薦枠が削られていたのは事実だ。早稲田を志望しても入れず他校に流れてしまった例も多いのだ。

 

例外で明治大学のように毎年選手の能力は高いが結果が芽生えなかったチームは監督やコーチによっていくらでも強くなれる。

 

皮肉ではないが、明治はAチームが負けてもBチーム以下が強い評判なのは毎年の事だ。それだけの選手層がある状況で正しい道さえ示すコーチ陣さえいれば強くなるのは当然の結果だ。

 

■新監督の相良氏と今年の大学ラグビー

今季の早稲田ラグビーは100周年の節目となる。

 

そんな年に新たに早稲田の指揮を執るのが三菱重工相模原のラグビー部監督だった相良南海夫氏だ。実績として一般的に知られている訳ではないが、早稲田大学のOBでアドバイザーやポジションコーチを務めた事があり早稲田学院ラグビー部の強化にも携わった。

 

他の強豪大学のコーチ陣がトップリーグのコーチ経験や選手経験をしてきた人間ばかりの中、相良監督が監督となった新・早稲田は間違いなく注目されるだろう。

 

9連覇中の帝京大学は主力選手を毎年バランス良く残しつつ結果を残している。今年はNO8マッカラン、WTB竹山、LO秋山主将など強力な選手揃い、更に東海大学や大東文化大学などこれまで活躍してきた留学生達が最上級生となり、更に今季から大学ラグビーの1試合における外国人枠は2人から3人となり、更に強力な布陣が組めるようになった。

 

依然、早稲田大学ラグビー部にとって有利な状況とは言い難いが早稲田は覚悟を決めて常勝時代を彷彿させる高速ラグビー、自分達の拘りで勝ちに行くべきだ。

 

パワーで真向勝負すればまだ勝つ見込みは少ないかもしれないが、的確なタックルと豊富な運動量による防御、そして安定したセットプレーが実現できれば自ずと有利な試合展開に持ち込む事ができる。

 

国内、海外の試合を何百試合も見てきた筆者からすれば、どんな強敵にも必ず綻びが存在する。強いチームはそんな綻びが出ようとも修正する力がある。

 

しかし、一度開けた相手の突破口を攻め続け相手の修正力を抑えられれば勝機はどんなチームにもある、そして各時間帯と陣地の戦略と戦術に基づき、正しい判断によるプレーができれば、ポゼッションを占める事は叶う。

 

上述の通り、今季の大学ラグビー界は留学生を率いているチームが有利となっている。しかし、そんなチームにも勝つ日本人のチームもまた必要だ。

 

フィジカルに屈しない心と、正しい知恵で前に進むチームを日本のファンは期待している。その意味で、今季の早稲田大学は100周年という節目という点よりも期待されているチームの一つなのだ。

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