2015年ワールドカップで日本は大躍進を遂げ世界に衝撃を与えた。その活躍を支えた一人として、ヤマハ発動機のフルバック五郎丸歩は日本のファンだけでなくラグビーを知らなかった日本人にも注目された。
このフルバックというポジションは言うなれば「最後の砦」とも言える精神的支柱だろう。
このページでは、そのフルバックの役割とスキルについて紹介する。
フルバックの役割
フルバックはバックスでいう最後尾を務める選手を指す。その存在感は大きく、チームが認めるスペシャリストでもある。
攻撃では相手防御のスペースを見つけ走り込み、防御ではチームの動きを把握し指示を出しながら自らも前に出てタックルをする。
2015年・ワールドカップ例えるなら日本代表の五郎丸選手やオールブラックスのベン・スミス選手がまさにこのような選手だった。
まずフルバックに求められる攻撃能力は突破力。ランニングが強いだけでなくスペースを見つけそれに合わせた攻撃オプションを選べる事が好ましい。
防御面では前線で体を張るディフェンダー達の穴を見つけ、そのスペースへのカバーディフェンスを常に意識しなければならない。何よりフルバックが最後尾に立ち最後のディフェンダーとなる為、責任も大きい。
この2つに共通している事は、エリアマネジメントなのだ。
トップレベルのフルバックはエリアマネジメントに対する意識が途切れない。
自分達がどこでプレーしているのか、またカウンターランをして相手に捕まってしまう場合に味方はサポートにすぐ来れるのか、キックかパスかランかを自由に選べるラグビーではチームの規律が大切である為、フルバックのプレーは非常に重要である。
攻守ともに最後尾にいるフルバックがエリアを守る意識を持つ事こそリスクマネジメントにも繋がり戦況を左右するといっても過言ではない。
フルバックのスキル
どんな良いフルバックにも必ずあってほしい共通のスキルはキックだろう。
上述の通りエリアマネジメント、つまりチームをできるだけ前に進める為にはキック能力は必要。キックの種類では、飛距離を持つロングキック、空中戦に持ち込むハイパントキックが主流だ。
ロングキックはエリアを稼げる為、相手チームとのキックの応酬には必ず使用される。よく伸びスピードのあるキックを蹴れば相手のカバーリング対策もできるだろう。
ロングキックを蹴るからと言っても、相手に察知されすぐにカウンターをさせるようなロングキックでは結果的に効果は得られない。ただ蹴るのではなく、どこにどんなキックをする事が効果的なのか、キッカーは正しい判断力を身に付けなければいけない。
ライン攻撃では、通常スタンドオフやセンターが前でプレーする中、フルバックも様々な動きが必要になる。
攻撃の基本であるが、時に囮となりダミーランを仕掛け味方にスペースを作る事もあれば、セオリー通りのポジショニングではない事が多い為、隙があれば味方の裏から飛び出し効果的なランをする事もある。
また、フルバックは攻守で最後尾を任される立場が故に、攻守が切り替わる瞬間からエリアマネジメントを忘れず相手のキックにも対応しなければいけない。自由に動けているように見えて実は堅実な考えがなければこなす事はできないのだ。
責任の多いポジション故に、スクラムハーフとスタンドオフ同様にスペシャリストとも呼ばれるポジションなのだ。
■最後に
フルバックというポジションはキックもパスも卓越したスキルを持ったプレイヤーが多いためか、世界最高峰と称されるプレイヤーが多く存在するポジションでもある。
2016年からの日本代表フルバックではサントリーの松島幸太郎選手が大活躍しているが、若手の中で期待の高い東海大学の主将・野口竜司選手で紹介しよう。
全国屈指の強豪・東海大仰星高校で1年時から活躍し3年生の時には全国大会優勝、ユース世代の代表も経験し、東海大学でも1年生の時から先発出場。
2017年は日本代表にも召集され超強豪であるアイルランド戦に出場しトライも取った。177cm85kgのサイズは世界のフルバックを見ても小さいサイズだが、野口選手の素晴らしい所はゲーム理解力とカバーリング能力の高さだ。
常にゲームの流れを考えているような危機管理能力の高さはフルバック特有とも言って良いスキルだ。特に相手のキックに合わせて動き、不規則なラグビーボールのバウンドをファンブルせず安定した確保をできるプレーは世界トップ選手でも行う事だ。
フィジカルの強さもあり、アイルランド戦では2人の相手タックルに倒れずトライを奪ったシーンは日本のファンに大きな期待を抱かせたものだった。
世界のフルバックは190cm前後で90kg・100kg以上、更に身体能力やラグビーセンスも抜群の選手が多い中で、彼等に基本能力で対抗できる日本人は中々現れないのが現状だ。
世界に目を向けると、この人の名前は知っておきたい。ウェールズ代表のリーハーフペニーだ。19歳で初キャップを獲得し、世界№1キッカーと称される彼のキックはゴールを量産する。
2015年World Cupは膝の怪我で離脱してしまったが、その後代表復帰し活躍している。